ドリームガールズ

 アカデミー賞が発表されましたね。せっかく映画の日で千円で見られるのだから何か見よう! とは思ったものの、ここ最近忙しかったのであんまりシリアスなのではなくて、笑えたり元気になれそうな映画を見ようと思って選んだのがこの作品です。

 ミーハーな意見としてはエディ・マーフィーって歌が上手い! とかビヨンセって本当に綺麗〜と華やかな部分に目が行きますね。ミュージカル仕立ての作品で、パワフルなボーカルときらびやかなステージの演出に目を奪われがちになりますが、ただそれだけの映画ではありませんでした。


 エフィ、ローレル、ディーナの仲良し三人組が歌のコンテストに出場。残念ながら落選するものの、カーティスという男にその才能を見出されて、人気アーティストのジミーのバックコーラスをつとめることになる。しばらくすると、三人はドリームガールとして見事デビューを果たすことになるのだが――。

 単なるサクセスストーリーではなく、彼女たちや周囲の人間、はては黒人社会の喜びや苦しみがぎゅっと凝縮された映画です。
 デビューのためにはボーカルとして抜きん出た才能を持ったエフィよりも、一番美しいディーナを前面に押し出す。
 名曲を作ってもすぐにコピーを作られてしまうのは、黒人のための番組でしか曲が流れないから。そのためには金を積んでDJを買収。
 全米に広めるためには白人受けするものを。そのためには、ソウルフルな曲よりも軽いタッチのディスコ調の音楽を、と成功のために彼らは少しずつ何かを失っていくのです。

 どんなに頑張っても認められない自分にいらだつエフィや、トップアーティストの仲間入りをし、映画デビューまで果たしたのに満たされない気持ちを抱くディーナ、自分の作りたい曲と売れる曲とのギャップに苦しむエフィの兄・CC、ドリームガールをトップに押し上げるためには何でもするカーティス。華やかなステージの裏で必死になってもがき苦しむ人間像に釘付けになりました。
 
 成功とともに、苦しい思いを共有してきた仲間たちは一人ずつばらばらになってしまいます。これが本当に成功と言えるのだろうか、本当にこれでいいのか? 登場人物たちと一緒に自問自答を繰り返しました。見ていて本当にしんどかった。

 最後のコーラスが、彼女たちの全てを物語っています。彼女たちの歌声は単に美しいだけでなく、人生の酸いも甘いもかみ分けた人間がもつ、人としての深みに彩られているように思いました。