ヒックとドラゴン

 予告編を見たとき、私はヒックという少年を臆病なヘタレ君だと思っていましたが、実際に見てみたら案外そうでもなかったですね。確かにバイキングにしてはヘタレ、なんですけど。結構言いたいことはしっかり言ってるし、臆病というよりはむしろ慎重派という印象を受けました。ただ、やることなすことが全部裏目に出て皆に迷惑をかけてしまっていますが(笑)、それでも皆の役に立ちたいという気持ちが感じられたので、私は予告編での第一印象を改めました。
(以下かなーりネタバレあり)
 ヒックの住む島では、ドラゴンは貴重な食料を捕ってしまう敵です。そのため、バイキング達は老若男女問わず、勇敢にドラゴンに立ち向かいます。ヒックの投擲機も、ちゃんとしかるべき時に完成していたら皆に認めてもらえたはずなんですが……。よりによって皆が見てない時に、まだ誰も正体を知らない黒いドラゴン「ナイトフューリー」に網をヒットさせてしまうとは!
 怪我をしているドラゴンをヒックは殺せず、それどころか傷ついた翼の代わり(義肢ならぬ義翼?)を作ったり、新鮮な魚を運んだりして一生懸命面倒を見ます。トゥースと名付けたドラゴンとの交流を通して、ヒックはドラゴンへの理解を深め、殺さずにうまくあしらう方法を身につけて行くのです。彼のような子は、住む世界が違えば戦士ではなく自然科学者として生きていけるのでしょうね。
 色々あってヒックにはガールフレンドもできたり、ドラゴンたちが島を襲う理由も見つけだしたりするのですが……。
 ちょっと待て、竜の巣に大ボスがいて、そいつに貢ぐためにドラゴンたちは家畜を襲っている、ですと?! おいおい、ドラゴンだって少しは家畜を食べてるだろうが! 現にトゥースは魚を食べてるんだし!
 練習用に飼われているドラゴン達が急に子供たちに懐いたのもちょっと違和感を覚えたし(ヒックはともかく)、「ご都合主義だなぁ」と感じた場面も多々ありましたが、かなり楽しめた作品でした。

 人と竜の交流が感動的なのは言うまでもありませんが、お互いを大事に思っているのに微妙なすれ違いが続いている父と息子の関係や、ただ「無事」では済まなかったヒックの事とか、「何もかも問題なし、めでたしめでたし」では終わらないほろ苦さなどもさらりと描いていた点はかなり評価できると思います。大人にも子供にもお勧めしたい作品です。