チャーリーとチョコレート工場

チャーリーとチョコレート工場チャーリーとチョコレート工場
ロアルド・ダール ジョン・オーガスト ダニー・エルフマン

ワーナー・ホーム・ビデオ 2006-02-03
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 とても有名な児童文学が原作だそうですね。知りませんでした。しかも、原作はロアルド・ダール。私は英語の授業で彼の短編を読んだことがあるので、とても興味がありました。
 チャーリーの家は超・貧乏。お父さんは失業中で、家は傾きかけているし(壁が斜め!)、晩御飯は肉の入っていないキャベツスープだし。二組の祖父母はひとつのベッドに互い違いに横たわる寝たきり老人。チョコレートを食べられるのは年に一度、彼の誕生日に板チョコを1枚きり。
 でも大丈夫。彼の家にお金はないけど、はある。その証拠に、チャーリーはとってもいい子に育っているから。
(以下、ネタばれ注意)
 貧乏といっても、傾きかけたおうちはなかなか味があるし、お母さんのファッションも見た目は確かにみすぼらしいけれども、とってもキュート。なかなかお洒落です。二組のおじいちゃん・おばあちゃんたちも、ほとんど寝たきりなのにもかかわらず、存在感があります。彼らに愛されているチャーリーは幸せ者かも。

 とってもあくの強いキャラであるウィリー・ウォンカを、ジョニー・デップが気持ちよさそうに演じています。同業者にレシピを盗まれて以来、従業員を追放して10年以上も工場の中に引きこもっていたものだから、招待した子供たち&その保護者とのやり取りもどこかがかみ合っていません。ギャグもすべりまくり。天才ショラティエであるウォンカは確かにすごい人だけれども、決して完璧な人間ではない。その事をチャーリーはちゃんと見抜いています。

 子供たちの日頃の行いの悪さが前面に出てくるたびに、「やりすぎじゃないの〜?」と突っ込みたくなる「おしおき」がまた強烈。あたふたする保護者たちをあざ笑うかのような、ウンパ・ルンパ族の歌と踊りには皮肉がたっぷりと仕込まれています(これ、一人の俳優さんが全部演じ分けているんですよ。大変だったろうな〜)。

 国民性の違いか、感性が合わないからかなのかどうかはわかりませんが、正直、工場内部のお菓子の森は、色彩がきつすぎて今ひとつおいしそうに見えませんでした。チョコレートの川で泳ぐウンパ・ルンパたちを見て、衛生面に不安を感じたのも本当(笑)。でも普通の板チョコだったら、ためしに食べてみたいかな。
 くるみの判別をするリスが可愛い〜。わがままお嬢様・ヴェルーカが欲しがるのも分かる気がします。調教はとても大変だったみたいですが。彼女への「おしおき」場面で流れる音楽がビートルズ風だったのには笑ってしまいました。
 こういうパンチの効いたブラックユーモアを、実際に映画を見る子供たちはどう受け止めるのでしょうか?

 最後、チャーリーはチョコレート工場の後継者になる権利を与えられるのですが、それを一度は断ってしまいます。お金は欲しいけれど、でも家族を捨てる事はできないと。チョコレート業界の頂点に立ったものの、今ひとつ満たされていないウォンカは、チャーリーから家族愛の大切さを学びます。

 一番大切なもの、それは家族。家族から遠く離れて暮らしている私には温かく、そして切ないメッセージでもあります。