運動靴と赤い金魚

運動靴と赤い金魚運動靴と赤い金魚
ミル=ファロク・ハシェミアン マジット・マジティ バハレ・セデキ

角川エンタテインメント 2005-08-26
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 小さな子供の、大きなプライドと思いやりがじぃんと胸に染み渡る、地味だけどほんわか温かい気持ちになれる映画です。
 あと、イランの小学校は男の子と女の子とで時間を分けるのか! とか、子供はあんなにもよく働くものなのか! など、イランの文化にもちょっとしたカルチャーショックを覚えることが出来ます(笑)。

(以下ネタバレ感想)
 はじめは「靴をなくしたのはお兄ちゃんじゃない! お父さんに言いつけちゃうから」なんて言っていた妹なんだけど(この子がまた可愛いんだなー!)、子供なりに一生懸命状況や相手のことを考えて、言いたいことがあってもぐっとこらえる様がじんときます。

 偶然、下級生が自分の靴を穿いているのを見て、普通だったら「それ私の靴よ!」と言いたくなるのだろうけど、その子の父親が盲目で、自分たちと同じように決して豊かとは言えない生活をしているのを見て、返せとは言えなくなってしまうシーンとか、マラソン大会から帰ってきた兄の表情を見て全てを察するザーラがいい。

 アリは妹の靴はなくしちゃうし、お母さんが病気だからと友達の誘いを断ったり、遅刻したことで先生に怒られて涙目になっちゃうしでいいことなしです(苦笑)。でも実は成績も優秀だし、マラソンの代表選手になれちゃうし、庭師(?)として富裕層の町に営業に行く時も、父親よりもよっぽどしっかりしていたアリ。すごいじゃないか! 将来が楽しみだよおねいちゃんは(笑)。

 運動靴を手に入れてワーイやったー! という笑顔でいっぱいのラストを見たかったのだけど、あの終わり方も余韻があって私は好きです。最後まで情けない表情のアリお兄ちゃんだったけど、お父さんが帰ってきたら二人ともいい笑顔になったのだろうな。
 池(?)の中の赤い金魚が、アリの足に群がるラストシーンはよくわからなかったのだけど、こちらのブログのコメント欄に、「一緒に観ていた娘が『金魚がお靴になったね』と言った」とあって、私も「おおっ!」と思いました。そういう感性を忘れちゃってるんだな、自分のような大人は。

 私は靴を何足も持っているし、「この靴もうダメになったし、流行遅れだから」と捨ててしまうこともある。でも、こんな風にたった1足の靴をぼろぼろになるまで大事に穿いている子供たちもいるのですね。彼らは確かに貧しいけれど、豊かな心を持っている――と書くのはあまりにもありきたりかな。
 本当は、この映画はブランドものの靴を履きなれている日本の子供たちにも観て欲しいのだけど、大人から薦めるのって押し付けがましいかな?(でも観て欲しい……)
 もちろん、私は今の日本の消費社会が全面的に悪いとは言いません。ものを消費することで成り立ってしまっているのだもの、今の日本社会は。でも時々は立ち止まって、忘れたものを振り返ることも大事ではないかと思います。