文字以外の演出がある作品

ミザリー (文春文庫)

ミザリー (文春文庫)

 熱狂的なファンのために強制的に小説を書かされる主人公が、古いタイプライターを与えられます。でも、ボロい(笑)タイプライターだから、すぐに壊れてしまう。「n」などの、英語でよく使う文字からどんどん取れていってしまうので、主人公は仕方なく欠けた文字を手書きで埋めていくのです。

 本では、そこだけ手書き風書体になっています(日本語版だと「な」行の単語)。物語が進むにつれて、どんどん文字が壊れていくので、それとともに緊迫感も増していく。これは面白い趣向でしたね。


おしまいの日 (新潮文庫)

おしまいの日 (新潮文庫)

 日本では、新井素子の「おしまいの日」。ヒロインの日記が全編ほとんどを占めるのですが、終盤ではどんどんノイローゼに陥っていくヒロインの筆跡が生々しくなり、書体も乱れていく。「一度書いた上から、ペンでぐちゃぐちゃと線を引いて消した跡」なんてのもあるし、「書き終えた日記のページを破り取る」演出もありました。

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 ……オンライン小説じゃまず考えられない演出だなー。「部分的に手書き文字」はまだしも、「ページ破り取ったみたいな画像」なんて貼り付けたら、ナローバンドの読者様に怒られちゃう。

 ひょっとしたら、電子書籍とは純粋に作者の文章力が問われるメディアなのかもしれません。あくまでテキストのみで、全てを表現する! うーん、奥深い世界だなぁ。