キャッチミー・イフ・ユー・キャン

 実話を元にした映画。高校生のフランク・W・アバグネイル(レオナルド・ディカプリオ)は、両親の離婚にショックを受け、衝動的に家出してしまう。そして、生きていくために偽造小切手の詐欺を始める。始めは失敗ばかりだが、大手航空会社のパイロットに成りすましたとたん、詐欺行為はとんとん拍子に進む。
 そしてフランクは小切手の偽造を繰り返して巨額の資金を手に入れるのだが、そんな彼をFBI捜査官カール・ハンラティ(トム・ハンクス)が追いかけていたのだった……。
 まだ10代なのに、全米をまたにかけて大金と美女をゲットしてしまうレオ様――ではなくて、フランク。詐欺の手口は「昔だから」成功したんだろうな、というくらい簡単なトリック。ワインのラベルをはがすのが趣味という手先の器用さ、もって生まれた美貌に加えて、土壇場での度胸と機転が彼の詐欺を成功させています。もっと違う環境に育っていたら、違う人生を送っていただろうな。

 大金を手に入れても本当に欲しい物は手に入らない。手に入れかけても、自分が犯罪者であるがゆえに手放さざるを得ない。

 クリスマスが来るたびに「追う側」の人間であるカールに電話をかけて、「話し相手が欲しかったんだろ」と図星を指されて、カッとなるフランク。嘘はつかないけど本当のことをすべて話さないカールに「嘘つき!」と食ってかかるフランクは可愛い(自分だって詐欺師の癖に……)。こういう、追う者と追われる者の友情って好きなんですよ。

 フランクが詐欺を繰り返していたのは、大好きなお父さん(クリストファー・ウォーケン)のために失った財産を取り戻そうとしていたからなのか。お父さんのためにキャデラックをプレゼントしようとしたり、「お母さんに会いに行きなよ!」と説得するシーンにはほろりとさせられました。

 壊れた家庭は元に戻らない。別れた夫婦はそれぞれ別の道を歩いていく。そのことに気づいて、しおしおとカールにお縄になるフランクの表情が切なくて。犯罪者なのについ同情してしまいました。

 コミカルなコン・ゲームものですが、根底に流れるのは親子・家族の絆の大切さ。それを描くのはスピルバーグ監督ならではかも。カールもフランクも、拠るべき家族を持たない寂しい者同士だからこそ、この友情が成り立つんだろうな。

 最後は、すべてが丸く収まるハッピーエンド。フランクはもう2度と詐欺はしません。だって、カールからお金では買えない素晴らしい物をもらったんだから。エンドクレジットで、モデルとなったご本人の現在について解説がありますがそこまで読むと感慨深いです。