「8 Mile」

8Mile [DVD]

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「ラップ」とは黒人だけのものだと思っていました。エミネムが現れるまでは。「ラップバトル」を知ったのは、この映画がきっかけでした。
 映画の表題である8 Mileとは、衰退した自動車産業都市・デトロイトの境界線である、"8マイル・ロード"。ここは都市と郊外、さらに白人と黒人とを分ける分割ラインにもなっているんですね。

(以下、ネタバレ感想)
 初めて見たラップバトルはひたすら相手の罵り合いなので、びっくりしました。でもその言葉がリズムに乗っており、さらに韻を踏んでいれば「Cool!」と高い評価を受ける。日本人には今ひとつなじみ難いものかもしれない。

 いつか最高のラッパーになってやるぞ、と思いつつプレッシャーに負けてバトル直前にゲーゲー吐いたり、結局一言も喋れなくて落ち込んでしまうジミー(エミネム)。男との関係にうつつを抜かして、ちっとも仕事を探そうとしない母親と喧嘩しつつも、年の離れた妹には優しく接する彼に、ちょっと母性本能をくすぐられてしまったりして(笑)。

 ビッグになりたい、いつか8マイルを越えてこの街を出て行きたい――と気持ちははやるのに、どうしても行動が伴わないジミーを励ます友人たちが実にいい味を出しています。特に、フューチャーはいい奴です。ジミーの才能をちゃんと認めているからこそ、彼にとっては黒も白も関係ないんじゃないかな。性格も、一番大人じゃないかって気がする。

 映画そのものは前半が淡々としすぎて、もう少しテンポのよさが欲しいかなーと思っていたのですが、最後のラップバトルでスカッとさせてくれたのでよしとしたいです。現代的若者の青春映画と言ってもいいかなぁ。単なるサクセスストーリーに終わらないところがまた心憎い。

 一番印象的なのは、ジミーがバスの窓から見える、街の看板や広告などを見て丹念にメモを取って語彙を増やそうとしているところ。トップを取ろうと思ったら、日々たゆまぬ努力が必要なのねと思い知らされる一場面です。
 実生活では何かとお騒がせなエミネムですが、この映画では違った一面が見られたので興味深いですよ!